「睡眠衛生」とは、睡眠と覚醒のリズムを安定させる生活習慣のことです。そのポイントとして、①起床と就寝時間を整える、②規則正しい食生活、③日中に日光を浴びる、④適度な運動習慣、⑤日中に外出する、⑥就寝前にカフェインやアルコール、たばこの摂取を避ける、⑦室温・照明などで寝室環境を整える、などがあります。「健康づくりのための睡眠指針2014」(厚生労働省)  も参考にしながら、こうした生活習慣を見直すことで、夜になると自然と眠くなりやすくなります。

よい睡眠には、薬よりも生活習慣を整える

 この年代の不眠の悩みの特徴として、「病院を受診した際に睡眠薬を希望する人が多い」と安達医師。

「睡眠衛生の改善を実践しても不眠が改善しない場合は睡眠薬を考慮しますが、こうした薬は入眠をサポートするだけで、中途覚醒を解消する効果はほぼありません。常用すると依存性があることも問題になっています。とくに、ベンゾジアゼピン系の薬は昔から日本では多く処方されていましたが、長期間の使用で依存性や認知症リスク、転倒リスクなどが問題となる薬のため、現在は処方を控える動きがあります」(安達医師)

 2020年から新しい睡眠薬として、「オレキシン受容体拮抗(きっこう)薬」などベンゾジアゼピン系以外の薬が登場しています。これらの薬は依存性が低く、転倒リスクも少ないとされ、より自然に近い眠りが可能なため、不眠治療薬として主流になりつつあります。

「いずれにしても、睡眠薬を使用する場合は漫然と内服するのではなく、薬の減量、中止を視野に入れながら、6カ月など期間を限定しての使用が望ましいです」(同)

適切な昼寝と睡眠で認知症予防も

 60歳以上によく見られる、睡眠の質を妨げる悪習慣とはなんでしょうか。

「よくない習慣として、1時間以上の長時間の昼寝や夕食後のうとうと、昼間の活動量の低下などがあります。睡眠の質を高めるためにはまず、ついつい長くなってしまいがちな昼寝時間を短くして、日中の活動量を増やすことが大切です」(同)

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1時間以上昼寝をする人は認知症のリスクが2~3倍に