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 超高齢社会を迎えた日本。そんな現代だからこそ、ブッダの人生、特に古代インドの四住期で考えた「林住期」の生き方から、老いのヒントを学ぶべきと教えてくれるのは、宗教学者の山折哲雄氏。国際日本文化研究センターの所長なども歴任してきた山折氏の新著『ブッダに学ぶ 老いと死』から一部を抜粋、再編集して解説する。

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「悟る以前の釈迦」と「悟った釈迦」の二分法では見えてこないもの

 私たちの生き方のヒントは、悟る前の釈迦、俗人釈迦の生き方にこそあるというのが私の主張です。

 仏教は今から約2500年前に釈迦によって説かれるようになりました。その頃、インドのいわゆる知識人の間ではバラモン教(ヒンドゥー教)が主流を占めていました。つまりインドでは、仏教以前から出家者によって重要な人生観が説かれていたわけです。

 その代表的な人生観は「四住期」です。これは人生を四段階のライフステージに分ける考え方です。

 このように分ける考え方で、釈迦の人生観、つまり生老病死観と表裏の関係にあります。

 もっと端的に言うと、釈迦はこの四住期を意識して生きた知識人でした。だから釈迦の人生、あるいは釈迦の教え、釈迦の言葉を本当に理解するには、まず四住期というインド古来の人生観を知ることが不可欠なわけです。

 ただ一方で、釈迦の教え、釈迦の言葉は悟りを開いたのちに唱えられたものが中心になっています。つまり釈迦は、悟った結果、つまり賢者になってから自分自身の体験などを語ったということになっています。それが仏教として受け取られてきたわけです。

 もちろん悟りを開く以前のことも、神話のようなかたちで悪魔の誘惑や遊女の誘惑、あるいは赤子の釈迦が「天上天下唯我独尊」と言ったという話、14歳の時に老人、病人、死者、出家者を見て人生に迷い、悩むようになったという「四門出遊」の話などが伝えられています。

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悟り以前と悟り後を分けて考えると、釈迦の生涯を全体として捉えられない