
専属通訳の仕事は多岐に及ぶ。水原さんは練習中に大谷のキャッチボールを務め、試合中はデータを伝える。エンゼルスに入団時はナインの輪に少しでも早く溶け込めるよう、チーム内で流行っているスマホのゲームのダウンロードを大谷に勧めた。グラウンド外でも球場に行き帰りの移動に同行する。
かつて、メジャーで日本人選手の専属通訳をしていた球界関係者は水原さんへの敬意を口にする。
「メジャーの専属通訳ってメチャメチャハードなんですよ。選手を気持ちよくプレーさせるために、グラウンド内外で色々なことに頭を張り巡らさなければいけない。水原さんはその苦労を表に出しませんが、重圧はすごいと思います。大谷選手はトップオブトップの選手ですしね。選手と通訳の相性が合わずに代わることも不思議ではありません。人間対人間ですから。水原さんは大谷の専属通訳を6年以上務めている。互いに心の底から信頼関係を築いている証です」
英語を流ちょうに話せることが、専属通訳で最も重要な要素ではないという。「一番大事なのは人間力です」と力説する。
「通訳はもちろん本職なので大事な仕事ですが、普段の立ち振る舞いが大事になってくる。チームのために、自分がサポートする選手のために献身的な姿勢を見せれば、他の選手たちに信頼を置かれる。エンゼルスで水原さんは大谷と同じぐらい愛されていました。彼の仕事ぶり、人柄が認められたからからです」