噴煙が上がる西之島。この頃、長井雅史さんらは現地調査を実施している=2023年9月20日、海上保安庁提供

新しい島が何度もできる「西之島」

 新しい島が何度も出現して話題になる「西之島」も、硫黄島から北に約300キロの位置にある小笠原諸島の無人島だ。

 2013年11月、西之島のすぐ近くで海底火山の噴火があり、新しい島ができているのが見つかった。新島ができるのは27年ぶりで、「領海や日本の排他的経済水域(EEZ)が拡大するのか」と話題になった。

 その後さらに溶岩の流出が続き、新島は西之島と「ドッキング」。現在も火山活動は続いており、10年前と比べて西之島の広さは約14倍になったという。
 

 西之島に過去2回上陸し、調査をしたことがある東大地震研究所の前野深(ふかし)准教授によると、西之島の火山活動は19~20年を境に大きく変化したという。

 13年から18年までは地下2キロほどのところにたまっていたマグマが地表に上昇し、大量の溶岩が流れ出た。

 そのマグマがなくなった後、別のマグマが19年から20年にかけて、地下深いところから急上昇。大量に含まれていた火山ガスが一気に気化し、大規模な噴火となった。現在はその活動の延長線上にあるという。

 西之島での火山活動は今後も続くのか。

「断定的に言うのは非常に難しい。ただ、現在のようなくすぶった状態が続き、ときどき溶岩が流れ出るような小規模な噴火が考えられます。可能性としては低いですが、またかなり活発な活動に変化することもあり得ます」(前野さん)

 前野さんらは16年に上陸した際に地震計を設置したが、その後、溶岩に埋もれてしまった。気象庁は火口から半径約1.5キロを「入山危険」としており、上陸して調査ができる見込みはしばらくなさそうだという。
 

噴火が「連鎖」する可能性は

 昨年10月9日、西之島の北約350キロにある伊豆諸島の「鳥島」付近で地震があり、千葉県から鹿児島県までの広い範囲で最大60センチの津波が観測された。

鳥島。2023年10月、島から西50キロの海上で軽石が浮いているのが確認された=海上保安庁提供

 観測された地震の規模が小さかったにもかかわらず、津波が広範囲に発生したことから、通常の地震ではなく、海底火山によるものという見方が強まった。しかし、詳しい原因はまだよくわかっていない。

 その後、最近の火山活動で噴出したとみられる軽石が鳥島近海で浮かんでいるのが確認され、軽石と津波の関係について調査が進められている。
 

次のページ
急速に「隆起」している島も