元朝日新聞記者 稲垣えみ子
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 元朝日新聞記者でアフロヘアーがトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

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 先日、友人の居酒屋で「まかない作り」をした。自分で言うのも何だが、いろんな意味でよくできたと思う。ついにここまで来たかと感慨深い。

 というのは、50歳で会社を辞め仕事の当てもなかった時、これからどう生きていこうかとあれこれ考えた有力プランの一つが「まかないのおばさん」になることだったのだ。思いつきのきっかけは、各地の酒蔵で蔵人のためのまかないを作る人がおらず、仕方なく日々弁当を食べているらしいと聞いたこと。じゃあ私、どーせ暇だし、報酬不要でまかないを作らせてもらい皆様と一緒に食べさせてもらえれば、食事代も酒代もタダになっちゃったりしてグフフ……などと妄想していたのである。

 で、実際に数日間体験させてもらったこともあるんだが、これがまあ大変。10人分とかの大量調理の経験もなかったし、朝昼晩の献立を考え買い物に行き作って食べて片付けて……というだけで日々忙殺されヘトヘトに。挙句飲みすぎて寝坊したりして、迷惑をかけに行ったとしか思えぬダメ賄い婦ぶり。仕事とは何事も大変だ。思いつきでできちゃうほど甘くないのだと痛感させられたのだった。

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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