どうよこのまかないっぽい食卓! 作ったものを一緒に食べてくれる人って家族だな(写真:本人提供)

 だがその後も夢は断ち難く、知り合いの店などで時々トライさせてもらってきた。で、わかったのは、まかないとは「あるもので何とかする」料理ということ。人様に食べてもらうとなるとホームパーティーでも開くかのように自分をよく見せようとカッコイイ献立を考えてしまうんだが、一番大事なのは店なり蔵なりを回していくことで、そのために余ったものや半端なもの、捨てるもので献立を捻り出すことこそが賄い婦に期待されるツトメなのである。

 ってことは、現在の私の普段の食事、すなわち冷蔵庫がないゆえ余った食材を日々くるくる消費するための食事作りと全く同じである。そう思ったら、硬い皮や芯、余り野菜を干したもの、頂き物のミカンなどでたちまち5品が完成。人生何がどこで役に立つかわからない。っていうか、何事もきっとどこかで役に立てることができるのかも!

AERA 2024年1月1-8日合併号

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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