各種報道や自治体、鉄道会社、不動産開発会社の発表資料などをもとに作成(週刊朝日 2023年4月7日号より)
各種報道や自治体、鉄道会社、不動産開発会社の発表資料などをもとに作成(週刊朝日 2023年4月7日号より)
各種報道や自治体、鉄道会社、不動産開発会社の発表資料などをもとに作成(週刊朝日 2023年4月7日号より)
各種報道や自治体、鉄道会社、不動産開発会社の発表資料などをもとに作成(週刊朝日 2023年4月7日号より)
週刊朝日 2023年4月7日号より
週刊朝日 2023年4月7日号より

 大澤さんは言う。

「『再開発等促進区』『都市再生特別地区』といった制度がもうけられ、容積率の大きなビルが増えました。容積率が緩和されるには広場や歩道、緑地などの公開空地をもうけたり、歴史のある建物を保存したり、防災施設をつくったりといった条件を満たす必要があります。条件をクリアするために公共的な役割のある施設やスペースが増えることは、市民や地域にとって必ずしも悪いことではありません。ただし、建築後20~40年程度で超高層ビルに建て替えられる例が増えており、容積率の緩和がビルの短寿命化を促している面がある」

■建物目いっぱいゆとりなくなる

 人口減が進む一方、建物や施設の維持、管理を考えると「高層ビル頼み」の姿勢には限界がある。高層ビルの林立は景観を損なうし、広場や歩道をせっかくつくっても十分に利用されないのなら意味がない。コロナの感染拡大後、在宅勤務や移住が増えてライフスタイルも様変わりした。大澤さんは続ける。

「今のような『スクラップ・アンド・ビルド型』の開発姿勢はいずれ成り立たなくなります。行政は将来の都市のあるべき姿を見すえた開発を促す戦略を考える必要があります」

 まちづくりに詳しい明治大学の小林正美教授も「開発にあたって何をつくるかだけでなく、いかに使うかという視点が重要になる」と強調する。

「従来は『つくる』視点ばかりが重視される傾向がありました。しかし今は、利用する市民やどう管理するかといった点を考え、行政や開発業者だけでなく、市民やNPOなどを巻き込んで一緒に開発計画を考えるケースが増えています」

 小林さんも関わった姫路駅や、小田急電鉄や京王電鉄が乗り入れる下北沢駅(東京都世田谷区)周辺の再開発は、外部の学識者や市民団体らが参加するワークショップや検討会で意見交換したり、複数の提案を出し合ったりして計画を練り上げていくプロセスがとられた。

「自治体や開発業者ら開発側ばかりで進めると、ともすれば許された建ぺい率や容積率の分だけ目いっぱいの建物をつくり、かえってゆとりのない空間になってしまう。都市開発には目先の利益だけでなく、市民や地域のことを考える必要がある。地域の価値が高まれば開発業者の評価も上がり、長い目で見てその会社の利益にもつながるでしょう」(小林さん)

 下北沢駅周辺では再開発に反対していた市民の意見も取り入れ、小田急線の地下化に伴う線路跡地に低層の建物や遊歩道、緑地からなる「下北線路街」などがもうけられた。街本来の魅力を残す試みだ。

 どんな駅前にしたいか、次の世代に残したいものは何か。地域ぐるみで考えたい。(本誌・池田正史)

週刊朝日  2023年4月7日号

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