元々、ラームは「LIVゴルフ」に批判的だった。過去のコメントを聞く限り「3日間54ホールで予選カットなしはゴルフの大会ではない」「お金のためにゴルフをしているわけではない」とネガティブなスタンスを取っていたが、突然の手のひら返し。移籍により莫大な契約金を手にするわけだから「魂を売った」と言われても仕方ないだろう。
しかし、ラームが移籍を決断した背景には、PGAツアーがなかなか選手の待遇を改善しきれていないことに要因があるともされている。
「LIVゴルフ」の登場でPGAツアーは賞金総額が大きく膨らみ、プレーヤーの待遇も向上しているようだが、例えば大金を得るのはトップにいる選手のみ。予選落ちすれば当然賞金はゼロとなりコストばかりが選手にのしかかる。
投打二刀流の大谷の契約は破格だが、それぞれのスポーツで世界最高峰とされるNFL、NBA、MLB、NHLという北米4大スポーツでは、多くの選手が高額な年俸を保証されている。例えば、2019年に日本人で初めてNBAドラフト1巡目指名を受けた八村塁が、今夏にロサンゼルス・レイカーズと結んだ契約は3年5,100万ドル(約73億円)。この金額をPGAのツアープロが稼ぎ出そうとすると……、どれだけの年数と優勝が必要かなんとなく想像がつく。
こうした人気スポーツと比べてしまえば、プロゴルファーたちの不満は募るばかり。PGAツアーが“世界最高峰”を謳うのであれば、さらなる待遇改善を求めるのも無理はないし、そんな中で「LIVゴルフ」のような新組織が生まれれば、そちらに気持ちがなびいても仕方ないというものだ。
そして、世界ランクNo.3のラームが「LIVゴルフ」に移ったことで、今後のPGAツアーはさらなる選手の流出に見舞われる可能性がある。周囲では既に次なる移籍候補としてトニー・フィナウ(米)という具体名が挙げられているほどだ。
フィナウといえば現在34歳でツアー通算6勝をマークしており現在の世界ランクは20位。先日自身のインスタグラムで「LIVゴルフ」行きを完全否定しているものの、ラームの手のひら返しがあるだけに、PGAツアーにとっては放出に戦々恐々のはずだ。