ただ、あの時、一緒に日本代表を戦った選手でもあった水沼宏太選手にだけは、「たぶんダメだと思います」「いろいろと考えます」と、やめるという意向を遠回しに伝えた。

 結局、水沼宏太選手は僕が言ったことを胸の内にしまっていてくれたようで、彼から何かが選手たちに伝わることはなかった。

ドイツでの経験を思い出させてくれたメッセージ

 夕方、家に戻った。丸1日近くがたっても、スマホにはたくさんのメッセージが送られてきていた。前向きなメッセージばかりだった。

 同じような境遇の人からのものも、たくさんあった。「僕も、前十字靭帯を何回も切っています」「私は今日、切ってしまいました」……。サッカー以外の競技をしている人からもメッセージが届いた。「私も頑張ります」「一緒に頑張ろう」。そんな文面が並んでいた。

 ドイツで左膝の前十字靱帯を断裂した2015年7月のことを思い出した。1回目の前十字靱帯断裂、あの時はとにかく不安だった。すぐにミュンヘンに飛んで、病院のベッドの上で夜通し、Yahoo!検索を続けた。

 不安で不安でどうしようもない思いを落ち着かせてくれたのが、同じケガをした人の記事だったり、経験談だったりした。

 勇気づけられたことを思い出し、「もしかしたら、今の僕にも似たようなことができるのではないか」と思うようになった。というより、「恩返しがしたい」「恩返しができるかもしれない」。そんな思いだった。

 もし、僕にできることがあるとすれば何だろう。

 同じようにケガから復帰しようとしている人たちに、僕がもらっているようなポジティブなメッセージをお返しするために、どうしたらいいのか。

 もう一度、ピッチに立つべきなのか。「復帰を目指す」という選択肢が頭の中に浮かんできていた。

大声援の後押しによって心に決めた引退撤回

 7月30日はホームの日産スタジアムで、鹿島アントラーズ戦だった。開始は夜7時。チームからは、無理をしてスタジアムに来なくてもいいと言われていた。膝のことを気にかけてくれていた。

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宮市選手が「え? うそでしょ?」と、心の底から驚いた理由