宮市亮著『それでも前を向く』(朝日新聞出版)
宮市亮著『それでも前を向く』(朝日新聞出版)

 痛みもあり、家で映像を見ながら応援するつもりでいた。ただ、手術の予定が2日後に入った。そうなると、試合翌日の7月31日は練習がオフで、みんなにしばらく会えなくなる。チームに「少しだけ顔を出します」と伝えた。

 鹿島戦は、優勝に向けた大事な首位攻防戦。プレーすることはできないが、一緒に戦いたいという思いだった。少しでも力になりたかった。

 スタジアムで試合を見て、みんなから力をもらって、それから手術台へという思いもあった。

 チームメイトのリュウ(小池龍太選手)がわざわざ迎えにきてくれた。彼も一緒に日本代表に行って、軽いケガをしていた。

 車の中でも、気を遣ってくれたのか、「どうするんですか?」とは一切聞かれなかった。「今日勝つといいですね」と、そんな話をした。

 試合開始が近づいてくると、選手がウォーミングアップのためにピッチへと出ていく。見送ろうと思い、通路で待っていると、いつもはまだ練習用シャツのはずなのに、なぜか選手たちが試合用のユニフォームを着ていた。

「何でユニフォーム?」と戸惑っていると、胸に「亮 どんな時も 君は一人じゃない」と書いてある。しかも、全員の背番号が「17」であることに気づいた。「17」は僕の背番号だ。

「え? うそでしょ?」と、心の底から驚いた。応援に行ってビックリさせるつもりが、逆にビックリさせられてしまった。

 水沼宏太選手や「キー坊」と呼ばれている愛すべき存在の喜田拓也キャプテンたちが、チームマネージャーやホペイロ(用具係)の方に相談し、総出で、急ピッチで何とか間に合わせてくれたということだった。

 ひと目見て、号泣してしまった。

 ケガをした日、ホテルの一室で最初に流したのは、悔し涙だった。でも、この時の涙はもう違った。うれしくて、ありがたくて、申し訳なくて……、ピッタリの言葉が見つからないほどに、いろんな感情が入り混じった涙だった。

 涙をふきながら、スタジアムのピッチに続く階段を上って、会場全体が見渡せるところに出ると、ゴール裏のサポーターたちが大きな声をかけてくれている。

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「ミヤイチー!!!!!!」