立川志の輔(たてかわ・しのすけ)/1954年富山県生まれ。談志に入門して立川流の落語家に。古典落語を現代的な芸能へ昇華させ独自の世界を展開

 NHK大河ドラマファンに聞く「観たい」大河テーマ。落語家の立川志の輔さんは「伊能忠敬」だ。AERA 2023年12月25日号より。

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 以前、千葉の香取市にある伊能忠敬記念館に行ったときのことです。記念館の前にある喫茶店でコーヒーを飲んでいたら、そこの主人が伊能さんという忠敬の子孫で「忠敬は大河ドラマにもなるくらい偉大な人ですね」と伝えると「こんな地味な人は大河ドラマにはなりませんよ」と。

 でも教科書に載るくらいの人だから大河ドラマにならなくても落語になるのではと忠敬を題材にした落語をつくりはじめたのですが、普通の落語にはなりませんでした。それでも落語にできる方法を考え進めていくと、忠敬がつくった地図がなければ日本は植民地になっていたかもしれない。忠敬を主人公にするのは無理でもその夢を支えた人々にスポットをあてた大河を見てみたい。そんなコンセプトから「大河への道」という「志の輔らくご」が完成しました。それがなんと高座以外にも、映画、漫画、小説にもなりました。

 歴史ドラマの時代考証が大切なのはよくわかります。でも、大河ドラマは作品の内容も大事ですが、47都道府県の広報になりかわり、その地域を盛り上げるムーブメントを起こす役割もありますよね。今の時代、もっともっと自由に歴史を描けばいいんじゃないかな。史実に基づきしっかりつくってもドキュメンタリーじゃないですからね。

 そうであれば、毎年の大河ドラマの扉はもっと自由に開いていけばいいように思います。大河ドラマは夢の世界なんですから、翔ぶならもっと大きく翔んだほうが面白いかもね。翔びたいだけ翔んで観たことない大河ドラマは歴史の楽しさが変わるかも。

 翔べ! 大河ドラマ。

(ライター・鮎川哲也)

AERA 2023年12月25日号