大阪府も26年度までに、所得制限のない高校無償化
グラフは、都内にある私立高校における各費目の平均額だ。初年度納付金の総額は、年々上昇しており、23年度は約96万円と、都立高の3倍超に上る。それでも私立高に通う生徒が、公立高に通う生徒よりも多いのは、東京特有だ。『進学格差』などの著書がある桜美林大学の小林雅之教授は言う。
「高校のあり方というのは、都道府県によって大きく変わります。地方では公立志向が強い県も多いですが、東京は私立高の数が多く、いわゆるブランド校を目指す動きもある一方で、都立に落ちた時の受け皿として私立が機能している面もある。大学受験をしなくて済むように、早い段階から系列校に入れる動きもあります」
所得制限のない高校無償化は、今年8月、都に先んじて大阪府が26年度までに完全無償化する制度案を固めている。府内全世帯を対象とし、私立高への補助額の上限となる標準授業料を現行の年60万円から年63万円に引き上げ、超過分は学校が負担する仕組みだ。
教育行政学・教育財政学が専門の日本大学の末冨芳教授は、「今後の制度設計で、都が補助を超える授業料について、都の独自財源で行い、学校負担を求めないなら、大阪より持続可能性が高い」と話す。
一方、世間では意見が割れている。「親の所得に関係なく、平等に教育を受けられるのは良いこと」と歓迎する声も多いが、「地域間の格差をより広げるのでは」など懸念の声も聞かれる。奈良県で子育て中の38歳女性は言う。
「東京在住の人がうらやましい。東京に続いて全国的に高校無償化となってほしいけれど、財政的に厳しい地方ではなかなか難しそう。ただでさえ地方に比べて年収が高く、不動産価値なども安定している東京に、さらに人を集中させることになりかねないのでは」
神奈川県在住の会社員男性(36)は、「他県と比べて、東京は生活にお金がかかるのを考えると(所得制限撤廃は)妥当では。地方でも追随して新たな政策などができると、地域活性化につなげられるかもしれない」と話す。
一方、塾講師を務める36歳男性は、「当事者である中学生に与える影響を考えると反対」と口にする。
「高校無償化によって、勉強もせず、目的も持たずに進学する子がさらに増えるかもしれない。頑張らなくても何とかなってしまう状況を後押しすることになりかねない」