しかし、安倍派は約100人を擁する最大派閥。岸田首相がその座につけたのは、安倍派の協力が大きかったのはいうまでもない。
自民党幹部が話す。
「岸田首相は臨時国会が13日に終わって、すぐに内閣改造、政務三役を一気に変えるはずです。とにかく安倍派を総取っ換えして無派閥を中心に要職に据えるしかない。ただ、政務官はキャリアも短いため、キックバックをもらえるわけがない、との反発もあり、個々の判断にということになりそう。ただ、安倍派以外でも、キックバックを受けて政治資金収支報告書には不記載、という議員もいるようで、岸田首相も『うちの派閥は大丈夫か』と必死になっている。議員の“身体検査”が大変だ」
13日には朝日新聞が、岸田首相が率いてきた「宏池政策研究会」(岸田派)が直近5年間で数千万円の不記載の疑いがあると報じた。
そうしたなか、早くも注目されているのが、小泉進次郎元環境相の官房長官への起用だ。河野太郎デジタル相らの名前も挙がっている。また、国民的人気が高く、派閥を作ってこなかった石破茂元幹事長を待望する声もある。
「反岸田」で決起も
「岸田首相は副大臣、政務官も安倍派はダメと言っているが、安倍派があってこそ首相になれたことをわかっているのだろうか。安倍派のなかでも、キックバックを受けていないという閣僚もいる。岸田首相の狙いは、肥大化した安倍派をバラバラにする戦略ではないのか。もし安倍派をそこまで冷遇するなら反岸田で決起するしかないという強硬派もいます」
と安倍派の衆院議員。
自民党で長く政務調査役を務めた田村重信氏は、
「この時期に政治資金パーティーは国民の理解を得られない。岸田首相が延期したのは正解だ。もし開いていたら退陣に追い込まれかねない事態だった。“聞く力”でなんとか逃れたね。しかし、今回のキックバック事件は議員数人にはとどまりそうもない。リクルート事件、ロッキード事件以来の大きなスキャンダルになる。解散・総選挙になれば自民党は政権を失いかねない。安倍派も文句はあるだろうが、もう派閥など関係なく、自民党で政権維持することが岸田首相の最大の使命かもしれない」
との見方を示している。ロッキード事件、リクルート事件のときの首相は退陣に追い込まれた。日々、新たな疑惑が出ており、対応次第では「政権交代」もささやかれている。
(AERA dot.編集部・今西憲之)