介護アドバイザーの髙口光子さんが家族の看取りに関わったケースの2例目は、きょうだい間で親の最期のときに関する考え方や気持ちが大きく異なったケースです。説明したはずなのに、話し合ったはずなのに、きょうだい全員が納得していたはずなのに、なぜきょうだいは救急車を呼んでしまったのでしょうか。前編に続き、後編をお届けします。
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「なぜおとうさんに救急車を呼んでくれないの!?」
高齢者施設に入居している88歳の父親に、週に2、3回会いに来て、職員ともよく話をしていたBさん(父親からみて次男)。Bさんには兄と姉がいて、同県内にいる兄は、Bさんのよいようにしてやってくれ、と時々見舞う程度で、介護には参加していませんでした。姉は東京に住み、連絡もまめではなく、介護について「こうしようと思う」とメールしても、たまに返信があるくらいで、やはりBさんに任せきりでした。
Bさん夫妻は、おとうさん本人の希望もあって、最期のときは施設で、慣れ親しんだスタッフに囲まれて迎えさせてやりたいとサービス担当者会議のときに明言していました。私たちスタッフも、信頼を置いてもらえたことに感謝の気持ちで受け入れました。
いよいよおとうさんの体力が落ちて、最期のときが近づき、Bさんはきょうだいや親族に連絡しました。私たちも気を引き締めて、最期のお見送りに臨もうとしていたところに、姉が駆けつけて、第一声が「おとうさん! こんなにやせちゃって。私は全然知らなかったわよ。かわいそう! 苦しそうじゃない! 人工呼吸器は? 救急車は? なぜ呼ばないの?」でした。
病院に連れていかないなんて、ありえない
Bさんが救急車は呼ばずに、ここで静かに最期を迎えさせてあげたいと言うと、
「施設はなんの権限があって、病院を受診させてくれないんですか? 放置するんですか?」
と私たちスタッフにかみつく有り様。