料理教室に通っている美良生くん(画像=奥山さん提供)

将来は「カレーうどん屋さん」になりたい

 障害がある子を育てる親の多くが抱える心配事といえば、子どもの将来についてだろう。美良生くんはまだまだ手がかかる年齢だ。奥山さんはどう考えているのだろうか。

「夫はわかりませんが、私は、子どもたちには高校を卒業したら、とっとと家を出てほしいって昔から言っているんです。美良生にとって、それは現実的ではないと思いますが、根本にはその考えがあります。障害があろうとなかろうと、子どもは親から巣立つもの。空良は自分一人で進む先を決める子なので、その背中を押してあげようと思っています。高校や大学も自分で行きたいところを見つけていましたから。美良生は、たとえば、彼のしたいことや好きなことを私たちが見つけて、背中を押してあげようと思っています」

 美良生くんは最近、字を書けるようになるための教室に通ったり、料理教室に通ったりしているという。

「字の教室は、彼が最近、字を書けるようになりたいって気持ちが出てきたから通わせています。料理教室は、将来何になりたいかって聞くと、彼は必ずカレーうどん屋さんって答えるので。彼の好きなことや持っているもの、得意そうなことを少しでも伸ばしてあげたいと思っています。でも、それって障害のあるなしにかかわらず、多くの人が持つ子育てのテーマですよね。目下の悩みは、進路です。美良生は来年の4月から中学校に進学します。小学校と同じように通常学級にするのか、あるいは特別支援学校や支援学級にするのか……。まだ、頭を悩ませていますね。でも、根本は彼の人生が素晴らしいものになるために、お手伝いをできたらなって思います。もっと先の将来に向けて、彼に適したグループホームとか移住先を見つけてあげたい、ということも考えていますが、とにかく今は目の前にあってできることは何かなっていうことを模索し続けているところです」

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