
ありのままを受け入れてくれる友達
奥山さんは、授業参観に訪れた際に、子どもたちの適応能力の高さに驚かされたという。
「グループ活動をしているときに、美良生が活動そっちのけで、でたらめの線を描いていたんです。彼は字が書けないので。それで、何か違うなと思ったのか、その線を消すんですね。一人だけ奇妙な行動をしていたので、私はドキドキしてしまって、『そんなことしたら周りの子が驚いちゃうよ!』と心の中で言っていました。でも、驚いているのは私だけで、周りの子たちは美良生と1年、2年と一緒にいるので、彼らにとってはそれが普段の美良生だったようです。この光景を目にしたときに、周囲の子たちは、美良生をありのままに受け入れてくれているんだなと感じて、この子はここにいてもよさそうという気持ちになりました」
美良生くんが受け入れられる環境ではあるが、学年が上がるにつれて、友達との関係も変わってくる。そんなとき、奥山さんは切なくなってしまうことがあるという。
「美良生のことを理解してくれるお友達はいるのですが、学年が上がれば上がるほど、その人数が減ってきたなという気はしています。もちろん、いじめられているということではないです。けれど、たとえば、前は友達と下校してきていたのが今では一人になったり、家に遊びに来てくれる友達が減ったり。大きくなると、周りの子はスマホでゲームをすることが多くなって、でも、美良生はそれを見ていることしかできない。学年が上がるにつれて、遊びの内容が変わってくるんですよね。それでも、美良生は友達が家に来るのを楽しみにしていて、カレンダーを見ながら、次、友達が遊びに来てもいい日を教えてって言ってくるときがあって、それがすごく切ないです。周りの友達がどんどん大人になっていくたびに、美良生は置いてかれてしまうんだなっていうことを最近感じています。日々の生活のなかで、今でも気持ちは揺れ動きますね」