山田真哉(やまだ・しんや 47)/公認会計士、税理士。会計事務所の芸能文化税理士法人の会長を務める。YouTubeチャンネル登録者数は76万超(撮影/張溢文)
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 配偶者の扶養に入っているパート主婦(主夫)の給与や税金の負担額に大きな影響を与える「年収の壁」に、今後さらなる変化が。公認会計士の山田真哉さんに聞いた。AERA2023年12月11日号より。

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 山田さんはチャンネル登録者数76万超のYouTube「少しだけお金で得するオタク会計士チャンネル」が人気だが、パート年収の壁のわかりやすい動画(複数ある)は軒並み200万回以上視聴のヒット。

「2024年10月から『106万円の壁』の前提条件が改められます。社会保険への強制加入対象条件の一つに従業員数100人超というのがありますが、これが50人超の企業に。より小さな会社でも社会保険の加入対象になるということです」

 パート年収が120万円でも“うちは従業員が少ないから106万円の壁は関係ないわ”と思っていた人も、勤務先が社会保険の加入対象事業者となれば逃げられない。さらにショッキングなのは、第3号被保険者という制度そのものが大幅に見直される可能性が高いという点。

 ここで軽く歴史を振り返る。国民年金が発足した1961年の時点で、専業主婦(主夫)は強制ではなく任意加入の扱いだった。しかし未加入だと離婚後に自分名義の年金がなくなることなどが問題化。そこで85年の年金改正から主婦(主夫)も強制加入となった。同時に、保険料自己負担なしの「第3号被保険者」が規定された。

 22年の厚生労働省「国民生活基礎調査」によれば、第2号被保険者(主に会社員や公務員)と第3号被保険者というペアの夫婦は全体の43%だった。これに対し、第2号被保険者同士──つまり共働きの夫婦は42%。現状は大差ないが、過去と比べて後者のほうが顕著に増加している。この変化を踏まえて、第3号被保険者制度そのものの見直しが議論されてきた。

「代表的な見直し案は三つです。まず、第3号被保険者の保険料も有料化するというもの(税金を控除した年間の実質負担は約15万円)。二つ目は、第3号被保険者が将来に受け取る年金額を減らすというものです」

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