2023年も年の瀬に迫った。そこで、AERA dot.上で下半期に読まれた記事を振り返る。社会編の7位は「『クルクルパー』『金が欲しくて提訴を遅らせた』… 交通事故被害者が損保側から吐かれる“心ない言葉”の数々」(10月28日配信)だった。(※肩書年齢等は配信時のまま)
東京・池袋で乗用車を暴走させ、松永拓也さん(37)の妻子の命を奪った飯塚幸三受刑者(92)=実刑確定=に損害賠償を求めた訴訟が、27日、結審した。【前編】のインタビューで松永さんが話したように、交通事故の補償をめぐる訴訟において、事故の被害者が、加害者側損保の担当者や弁護士の言葉によって傷つけられることは珍しくない。当事者はこれをずっと問題視してきたが、その事実はあまり知られてこなかった。改めて、家族を交通事故で失った遺族や、交通事故被害者救済を専門とする弁護士に実態を聞いた。
【前編】<「池袋暴走事故」民事初判決 松永拓也さんを苦しめた飯塚氏の「それなら謝罪はしない」という不誠実さ>より続く
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「病院は医療体制が整っているのだから、家族が見守る必要はありませんよね? 交通費ふくめ、見舞いに行くためにかかった費用は補償しません」
「提訴までに時間がかかっていますが、遅延損害金が欲しくて、わざと遅らせたのではないですか?」
これらは、交通事故被害者が、実際に加害者側損保から投げかけられた言葉だ。
関東交通犯罪遺族の会(あいの会)には、保険金をめぐる民事裁判で、被害者が損保側弁護士の「荒唐無稽な主張」や「冒涜(ぼうとく)的な言動」に傷つけられる“2次被害”の相談が、年間数十件のペースで寄せられてきた。そこで昨年7月、同会の代表者たちは、「もう少し被害者感情に配慮するよう損保各社に指導してほしい」と金融庁に意見書を提出した。