「言えることは全部言ってやろうという発想」
あいの会で監事を務める東光宏さん(53)も、2次被害者の一人だ。
2010年、東さんの母・令子さん(当時75歳)は、交通事故で命を落とした。青になった横断歩道を渡ろうとしたところ、信号無視をして突っ込んできた自転車にはねられて頭を強く打ったのだ。令子さんは病院に運ばれ、5日後に息を引き取った。
刑事裁判を経た2年後、東さんは損害賠償を求めて訴訟を起こした。その裁判のなかで、損保側弁護士は「交通事故ではなく医療ミスのせいで亡くなった」と言い放ったという。
病院の医療記録を見ると、令子さんは事故翌日、病室のベッド下にうずくまっている姿を確認されていた。そこに目をつけた弁護士は、「令子殿の死亡については、ベッドからの転落がなければ生じなかった可能性があることから、本件事故との間の相当因果関係を欠く」と主張した。
裁判では、損保側弁護士の主張は一蹴され、東さん側の主張が全面的に認められた。しかし東さんは、「支払う保険金の額を安くできる可能性が万に一つでもあるなら、相手が傷つこうが、言えることは全部言ってやろうという発想なんですかね?」と、憤る。