さて、まみこさん。僕はこんなふうに考えているのですが、10年ほど前、「サンタさんはいるの?」という質問に答えた文章がネットで話題になったのはご存知ですか?

 正直に言うと、サンタに関する疑問の答えとして、これ以上の名文はないと僕は思っています。

「知恵袋 サンタはいるのか」でググるとすぐに出てきます。

「Yahoo!知恵袋」に投稿された小学校6年生の女の子の疑問に対する回答です。

 この女の子は、サンタはいると思っていて、「どうして家に入ってこられるのか」という疑問に対しては、母親が「イブに鍵を開けてる」と言っていると書きます。

 サンタさんへの手紙を枕元に置いたら、次の日に「スラスラの英語で」返事がありました。

 でも、「どうして、サンタさんが空を飛んでいる様子の動画がないのか、疑問です」と書くのです。

 合理的思考が芽生えてきたのですね。成長している証しです。

 この相談者の親は、「イブに鍵を開けてる」など娘さんの信念を補強する方向だったわけですね。それは、あとあと、娘さんが問題を知った時に少しゴタツクかもしれません(でも、繰り返しますが、「あなたの喜ぶ顔が見たかったの」と微笑み、謝れば、大した問題にはならないと思います)。

 本当は「どうして家に入ってこられるの?」と聞かれたら「不思議だね。どうしてだろう」とうなづくだけでいいのです。手紙の返事はやめた方がいいと思っています。「サンタさんは忙しいから書けないのかなあ」ぐらいで終わらせて物証は残さない方が、あとあと、真実を受け入れることにソフトランディングしやすいと思います。

 さて、知恵袋の匿名さんの見事な回答は、まだでしたら、ぜひネットで探して読んで下さい。僕はうなりました。

 それから、時間があれば、その匿名さんのプロフィールの文章も。回答が話題になったことで、サンタとクリスマスに関する正直な思いを書いています。

 まみこさん。そんなわけで、焦ることなく、次男さんの成長に任せることが一番いいことだと思いますよ。

 ブルーな気持ちは忘れて、息子さんたちと素敵なクリスマスを過ごされんことを。メリークリスマス。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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