本連載の書籍化第5弾!『鴻上尚史のおっとどっこいほがらか人生相談』(朝日新聞出版)

【鴻上さんの答え】
 まみこさん。素敵な息子さんじゃないですか。浅慮を恥じる必要なんかないと思いますよ。だって、子供が「サンタは親だ。実在しない」と気付くのは、ほとんどが子供たち同士の会話だと思いますからね。

 そういうネットワークに、長男さんと違って次男さんはたまたま出会わなかっただけだと思います。それは、まみこさんにはコントロールできないことだし、コントロールしてはいけないことなので、浅慮とは全然関係ないと思います。

 さて、まみこさんは「なるべく傷つけないように、サンタさんは両親だったと伝えるアイディア」を求めていらっしゃいますが、僕は、「無理して伝える必要はない」と思っています。

 小学校低学年ぐらいまでは「サンタさんは実在する」と考える子供が多いでしょう。でも、小学校4年生前後から、「どうして一晩で世界中に配れるんだろうか?」「どうしてトナカイは空を飛べるのだろうか?」「エントツもない私の家にどうして入ってくるんだろうか?」と合理的思考が芽生えてきます。

 それはとても大切なことですね。ものすごく大きなことを言えば、それは将来、陰謀論にはまらないための重要なレッスンになると僕は思っています。

「サンタさんはいるんだ!」と友達に主張しても「じゃあ、なんでたった一人が一晩で世界中の子供にプレゼントできるんだよ?」と友達に責められて「魔法だよ!」と答え、「どんな魔法なんだよ?」「サンタさんの魔法だよ!」「じゃあ、なんで魔法を使えるサンタさんが、欲しくもないものくれるんだよ。俺なんか、今年は『世界史学習マンガ』だったぞ。そんなもんいらないんだよ!」なんてつっこまれ、一生懸命考えていくうちに、「おかしいぞ。どういうことだ?」と思った時に、親友や親に「ねえ、サンタさんて、本当はいないの?」と質問する時がやってくるのだと思います。

 親としては、そう言われたら、「そう。いないの」と答えるのではなく、まず、「どう思う?」と聞くのがいいと思います。

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