鴻上尚史さん(撮影/写真部・小山幸佑)
鴻上尚史さん(撮影/写真映像部・小山幸佑)

 サンタを信じている小6の息子に、どう真実を明かすべきか悩む48歳母親。いつか真実を知って息子が傷ついてしまう可能性を恐れる相談者に、鴻上尚史が「無理して伝える必要はない」とした上で、これが「将来のための合理的思考の重要なレッスン」になる、と説いた深い理由とは。

【相談204】サンタを信じている小学6年生の息子に、傷つけないように真実を伝えたい(48歳 女性 まみこ)

 小学6年生の次男がいます。毎年クリスマスになると、“サンタさんから”という名目で枕元にプレゼントを置いてきました。その年によって(本人の)望むもののときもあれば、外れるときもありましたが、毎年素直に大喜びしてくれ、その姿を主人と微笑ましく眺めていました。

 3歳上の長男は、あるとき友人から“サンタはおらず両親がプレゼントを用意している”と聞き小学校高学年のときにはもう信じていませんでした。

 次男も時がくれば気づく日が来ると思っていましたが、未だにサンタさんの存在を深く信じています。元々長男に比べて自分に正直で素直すぎるところがあり、今年もクリスマスが近づき楽しみにしている様子が伝わってきます。

 毎年サンタさんが来ない子について“サンタを信じていれば来るのに信じてないから来ないんだ。もったいないな”と発言したり、またあるときはネットでプレゼントを購入した履歴を見られてヒヤヒヤしたのですが“サンタさんもここからプレゼントを用意するんだね”と即答。きっと他にも気づく機会もあったと思うのですが、どうも軽々とそこを乗り越えてきており、無意識に“気づきたくない”と思っているのかも?とすら考えます。

 ここまで信じている素直さに嬉しくもあるのですが、同時にいつか真実を知るとき傷ついてしまうのではないかと罪悪感に駆られます。なるべく傷つけないように、サンタさんは両親だったと伝えるアイディアがあれば教えていただきたいです。今までは子供と一緒に楽しみにしていたクリスマスも、ここ数年はブルーな気持ちです。喜ばせたい一心で始めましたが、長年嘘をついていたことには変わりなく、自分の浅慮さを恥じています。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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