湾岸戦争で破壊されたイラク軍の戦車(ロイター/アフロ)
この記事の写真をすべて見る

 1年ぶりに首脳会談を行われ、関係安定化に動くアメリカと中国。「台湾有事」が起きれば日本が戦禍に巻き込まれることも危惧されているが、日本は何をすべきなのか。軍事評論家・田岡俊次氏の著書『台湾有事 日本の選択』(朝日新書)から一部抜粋、再編集して、説明する。

【写真】アメリカは日本を守っていない

*  *  *

法と秩序─アメリカは守ったか

 日本人の多くは、「日米安全保障条約」によって、日本はアメリカに守ってもらっていると思い込んでいるが、それは一種の信仰、幻覚にすぎない。

 在日アメリカ軍で日本防衛に当たっているのは一兵もいない。防空は1965年以降航空自衛隊が全面的に責任を負っており、アメリカ軍で日本にいる唯一の地上戦闘部隊である海兵隊の沖縄駐留は、韓国や東南アジアへの出撃のための待機であって、日本の防衛のためではない。冷戦時代に日本を守るなら北海道に配備したはずで、沖縄にいたのはそこが最も安全だったからだ。

 私が嘉手納基地を訪れた時、広報係の大尉がアメリカ本土からの視察団に「本基地の価値」を説明するためのスライドを見せ「ここはソ連の戦闘機の行動半径外で安全。爆撃機は届くがそれは日本空軍が迎撃します」と言ったので笑ってしまった。アメリカ軍は自衛隊に守られているのだ。

次のページ
米海軍は日本の商船を守らない