補導員のやり方を改めようとトライしたのは、千葉県習志野市の中学校の元PTA会長、齋藤いづみさんだ。やはりPTAでなり手が出なくなったため、一昨年と昨年、補導員を引き受けた。補導員を出さずにやり過ごす手もあったが、どうせなら仕組みから見直そうと、PTA役員をやった仲間たちとともに補導員になり、地区役員まで引き受けた。
だが、2年ではあまり変えられなかった。もともと補導員の活動は主催や責任者がわかりにくい。募集するのは市の教育委員会の青少年センターだが、活動を取りまとめるのは「青少年補導員連絡協議会」の役員をするベテラン補導員たちだ。市の職員は数年で入れ替わるが、協議会の役員は何十年も続ける人が多く、発言力が強い。役員1年目の齋藤さんらが意見や提案をしても改革には至らなかった。
「役員をして感じたのは、無理な動員が起きるのは予算ありきだからということでした。市の予算で補導員に対する報酬(補助金)の上限が決まっているから、その上限まで人数をそろえることが目的になっている。人数が減れば予算が減るので、それを避けるために無理にでも人を集めてしまうのです」
街頭からネットに移行
齋藤さんも「そもそも街頭パトロール自体まだ必要なのか」という疑問を感じている。パトロールは青少年健全育成連絡協議会やPTAなどの他団体や、市の職員も行っている。せっかく補助金をつけて報酬を出すなら、もっとニーズの高い課題に対応したほうがよいと話す。
パトロールの場を街頭からネットに移行した人もいる。NPO法人「ネットポリス鹿児島」理事長の戸高成人さんは、約20年前に補導員として街頭パトロールを経験。だが、当時すでに若者たちはガラケーでネットに入り浸りだったため、ネットパトロールに取り組むようになった。現在は子どもをネットリスクから守る活動をする戸高さんは、取材に「街頭パトロールも意義はあると思うが、健康づくりとしてやるくらいがちょうどいい」と語った。(ライター・大塚玲子)
※AERA 2023年12月4日号より抜粋