地域によっては各校PTAに委嘱される補導員。「学校が終わる前の午後3時頃からパトロールしても子どもがいない」という声も(撮影/IZUMI SAITO)
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 街を回り、非行に走りそうな子どもたちに声をかけて注意や助言をする「補導員」。PTAから選出される地域もあるが、若者の行動が変化した今、見直す動きもある。AERA 2023年12月4日号より。

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 補導、という語を今の10代は知らないだろう。1950~60年代に青少年の非行を防ぐ目的で始まった活動で、今も自治体によっては「補導員」の委嘱を受けた市民が街頭をパトロールしている。不良少年少女に注意や助言をするためだ。補導員は地元住民やPTAなどから選出される。

 だが、半世紀を経て若者の行動は変化した。この約20年、刑法犯少年の検挙人員は減り続け、かつて見られた盛り場で飲酒、喫煙する若者より、ネットやゲーム依存、ヤングケアラー等の若者への支援が注目を集める。

 そして今、親たちを悩ませるのは「補導員のなり手がいない」という問題だ。千葉県の公立小学校に子どもを通わせる40代女性は、役員としてPTA改革を進め、従来の強制的な委員決めをやめた。本人の希望で参加する「手挙げ方式」に改めたが、唯一、補導員の選出には課題が残った。補導員は市から委嘱される仕事としてPTAにも人数が割り当てられているからだ。市全体で何十人と枠が決まっているため、自校が補導員を出さなければ他校の保護者が人数を埋めることになりがちだ。

夜遅く出歩く子は激減

「以前はうちのPTAも活動をノルマにしていたので、補導員に手を挙げる人も少しはいたんです。でも委員決めの強制をやめたら、補導員はもう誰もやりたがりませんでした」

 やむなく女性は今年度の補導員を自ら引き受けた。

 女性が住む自治体では、補導員は毎月地区ごとのパトロールと会議に出るほか、市全体で行う街頭活動にも月1度参加する決まりだ。パトロールのほか挨拶運動や清掃といった街頭活動もあり、各自都合のいい時間帯のものに参加する。市から報酬が出ており、額は1時間約1500円。パートの時給と思えば悪くないが、今は多くの母親が働いている。「こんなに活動頻度が高くては、できる人がごく限られてしまう」と女性は話す。

「補導員自体、私はもう要らない気がするんです。この活動が始まった頃と違って夜遅くに出歩く子やゲームセンターに入り浸る子はめったにいない。コロナ禍では一時活動が止まりましたが、それで非行が増えたわけでもない。これまで補導活動をしてきてくれた方には感謝しますが、見直しが必要では」

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