シメオンは10代前半の頃、最初は修道院に入り、極端に禁欲的で過激な独自の苦行を続けました。彼がヤシの葉をねじってつくった縄で全身を縛ったところ、それが肉に食い込んで死にかけたことがあります。その時は、修道士たちが液体で縄を柔らかくして切り裂くという治療を3日も続ける必要がありました。生還したシメオンは、「お前のように過激な修行を好む者に共同生活は無理だ」と、追放されてしまいます。

 修道院を追われたシメオンは、以後しばらく崖のような狭い空間で、ひっそりと苦行を重ねながら暮らしていましたが、いつしか「だれよりもストイックな修行者」という彼の噂が広がり、弟子になることを希望する者が殺到したため、逃げ出します。

 その後、シメオンは訪問者に修行の邪魔をされないように、高さ3メートルの柱の上で4年間、生活しました。彼は人々から隠れているつもりでそうしたのですが、逆に目立ってしまい、彼を訪ねる人が途切れませんでした。努力する方向を勘違いしたままエスカレートさせて、シメオンは、次に高さ6メートルの柱の上で3年、その後、高さ10メートルの柱での10年間を経て、最終的には高さ20メートルもの柱の上で20年も暮らすことになりました。支援者が運んできた食事を吊り上げて食べていたようです。柱の頂上には手すりがついて、シメオンは基本的に、ずっと立ったままでした。

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観光地化したシメオンの柱