しかし、近年のコンピューターの発展によって膨大な計算が簡単に行えるようになったことから、21世紀に入ってからはさまざまな分野でベイズの定理の応用が爆発的に広がっています。
たくさんのデータを扱うための数学は「統計学」と呼ばれています。ベイズの定理は数学の分野としてはこの統計学にあたります。ただし、統計学の専門家の多くは、ベイズ統計学はこれまで「統計学」と呼ばれてきた学問とは大きく異なるものだと考えています。そのため、ベイズの定理を使った統計学のことを特別に「ベイズ統計学」と呼ぶことが多いのです。
従来の統計学は、目の前にあるデータの分布の平均値や広がり具合などを分析することによってそのデータの特徴を捉えようとするもので、こちらはかなり以前から実社会に応用されてきました。
もともと使われてきた統計学があったのに、なぜ近年、ベイズ統計学が注目されはじめたのでしょうか。
それは、コンピューターや通信技術の発達で、扱うデータが昔とは比べ物にならないくらい増えてきたことが関係しています。
現代はビッグデータ時代とも呼ばれ、新しいデータが次々と生み出されています。手元のデータで分析を行っていても、分析している最中に、無視してはいけない新しいデータがどんどんやってくるといった忙しさです。
手元のデータを使って分析を行っていたところ、新しいデータが追加されてきたとしましょう。
従来の統計学では、新しく来たデータを今までのデータに追加した上で、分析を一からやり直す必要があります。というのも、従来の統計学における分析手法は、全部のデータがすでにそろっているという前提で作られている(データが追加されるという状況に対応していない)からです。