新分野といっても、ベイズ統計学自体はかなり以前から存在はしていました。これを創り出したのは、トーマス・ベイズという名の18世紀のイギリスの牧師です。その誕生の経緯はかなり独特で、ベイズは“キリストの奇跡を立証するために”この定理を考え出したのでした。

 1748年のこと、スコットランドの哲学者デイヴィッド・ヒュームは著書『人間知性研究』で、それまで真理と考えられていたものに懐疑を投げかけました。

 その本の中で彼は、多くの人たちが信じてきた聖書に記されているキリストの復活(キリストが十字架にかけられて亡くなったあとで復活したという出来事)が実際に起きる確率は極めて低く、むしろキリストの復活を見たという人々の証言が不正確である確率の方がずっと高いと述べたのです。

 牧師だったベイズはこれを読んで怒り、復活の奇跡を疑いの余地なく立証するために数学を使った考察を始めました。

 聖書には、キリストの復活を目撃した人々の証言が多く残されています。ベイズはこの点に着目し、目撃証言の1つ1つが仮に不確かだったとしても、多くの独立した証言があることを踏まえると実際に起きた確率が高いと結論付けられると考えました。

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事後確率=新しいデータの影響×事前確立