いやー、スズ子、振られてよかった。松永の最大のダメポイントは、スズ子を子ども扱いしているところだ。スズ子が移籍を承諾したと誤解して、松永はこう言う。「あとは我々大人に任せておけば大丈夫だ」。梅丸との関係はどうなるかというスズ子の問いに、日宝が金で解決すると答え、「そんなことは、スズ子が知らなくていいことだよ」。絶好調の歌手に、失礼極まりない。
結局、中山も松永も、相手を自分のために利用しようとしていたのだ。中山はもちろん、松永も薄々、相手が自分を好きとわかっていたはずだ。恋愛感情を確信犯的に利用しようとしていたとは言わないが、十分にずるい、と思う。
そんな中山と松永を見ながら、私の頭にある台詞がリフレインしていた。それは、「男なら、女の成長をさまたげるような愛し方はするな!」
これだけでわかってくれた方、同世代ですよね。そう、これは山本鈴美香の漫画『エースをねらえ!』の宗像コーチの名台詞。死を目前にした宗像が、岡ひろみという弟子をめぐって藤堂という先輩(岡のね)に語ったのだ。「週刊マーガレット」を片手に、「恋愛ってば、こうでしょ」と心に刻んだ私が高校でテニス部に入ったのは、1976年のことだった。
古い話はこれくらいにして、「ブギウギ」に戻る。日宝への移籍を断ったスズ子は、梅丸に給料アップの要求をした。「今回のことで、自分の価値いうもんを考えました」と。松永に振られて、大人になった。転んでもただでは起きないスズ子、ゴーゴー。