海の向こうのメジャーリーグはどうだろうか。守備の名手を表彰するゴールドグラブ賞は、記者投票で選考する方式ではない。両リーグ別に各ポジションで3人の候補選手が発表され、その後にメジャーの30球団の監督と最大6人のコーチが、自身が所属する球団以外で同一リーグ内の選手の候補者から投票する仕組みになっている。昨年から「ユーティリティ部門」が新たに設けられた。受賞以前に、各ポジションでこの3人の枠に選ばれることが狭き門だ。今年は、吉田正尚(レッドソックス)、鈴木誠也(カブス)、ラーズ・ヌートバー(カージナルス)はノミネートされず。両リーグ10ポジション20選手のうち、13人が初受賞となった。
「米国のゴールドグラブ賞も以前は全盛期を過ぎた選手が選ばれるケースが目立ち、賞の価値に疑問が上がることが少なくなかったが、守備の指標が細かく数値化されたデータと首脳陣の投票が重視されるようになってからは、以前より公平な選考基準になっていると思います。今年で言えば、ナ・リーグのユーティリティ部門で韓国人選手のキム・ハソン(パドレス)がアジア人の内野手で初めて受賞しました。アジアの選手は身体能力が低いというのが定説でしたが、先入観に左右されず球際に強く安定した守備能力がきっちり評価された。複数のポジションを守れる守備職人が輝くことは大きな価値があると思います」(米国在住の駐在員)
守備の名手が報われるシステムに――。記者投票を含めて日本のゴールデン・グラブ賞は選考基準を見つめ直す必要があるかもしれない。
(今川秀悟)