秋元:時代がはまるんだろうね。だって作り手はいつも一生懸命常に未来に向けて球を打っているわけだから。
鈴木:粘り強く続けることなんですね。
秋元:そうそう、継続は力なり。AKBがロスで公演した時、全然客が入らなかったけど、僕は逆にワクワクしていた。ここが満員になったら面白いだろうな、と。今、新聞や雑誌が売れない、テレビが観られていないという状況だけど、例えば小学館が出した日本国憲法を読みやすくした本がベストセラーになったり、文庫のカバーを変えたらヒットしたり。そういうすごいことが時々起きるんだよ。以前、特別編集長をやったAERAが今の時代でもバカ売れしたら面白いだろうなとも思う。雑誌が売れない時代だけど逆にある意味でブルーオーシャンだから。
鈴木:そうですね。そして、すごいことが絶対に起きますね。
釣り竿さえあればいい
秋元:世の中の人は常に見たことのないものを欲しているんだよね。フジ系バラエティー「夕やけニャンニャン」(1985年4月~87年8月)で、この番組当たるな、と思ったのは、国生さゆりがある出演者について「今日は中間テストでお休みです」と言った時だね。そんななめた番組ないでしょ(笑)。
鈴木:あはは(笑)。
秋元:でも、新しい価値観だった。おさむの「素人のおじさん」も、同じくらい新しくて本当に面白い。多くの人が定年まで働く中で「オレ、やめた」と言えるところがすごいし、やめて何をするかは未定だけど、きっと面白いものを見つけられる自信があるわけだから。その生き方に憧れる人は多いと思うな。
鈴木:やめると決めたら、放送作家は天職だったな、と思いました。いい時代に作らせてもらいました。
秋元:人間は最終的には、釣り竿さえあればいいわけだよ。いくら魚をいっぱい捕っても、腐るだけ。だから、魚の量を競うのではなく、釣り竿があれば好きな時に好きなものが釣れる。おさむは10年後も20年後も釣り竿であって、きっと魚を釣るだろうと思うから、心配してないよ。
鈴木:そうですね、なんとかなるとは思ってますね。寂しさは1ミリもないんですよ。華々しく、清々しい気持ちです。
秋元:あはは(笑)。これからも日本のエンタメにおさむはいるのよ。素人のおじさんとして。SNSを駆使して声をかけてくれるんじゃないかな。いつでも戻ってきてよ。
鈴木:ありがとうございます!
(構成/編集部・古田真梨子)
※AERA 2023年11月20日号より抜粋