そのためにも医師は「発達障害をただ診断しているだけ」ではなく、幅広く研鑽(けんさん)を積む必要があると思っています。そしてそのためにも、「信頼のおける児童精神科医」が増えるような医学教育制度も大事だと思います。ただそのような機能を地域が有さないのであれば、やはり市場原理的な要素は働いてくるのだろうと思っています。

――親はどう行動すればいいのでしょうか。

 個人的には市場原理が全て悪いとは思っていないので、納得がいかなければ他の医療機関も考えてみるというのは一つだと思います。基本的には、「診断されること」が大事なわけではなくて、子どもにとっての良い方向性を見つけられることだと思うので。

 親御さんの中には、医師から「障害だ」とか「病気だ」とか言われて諦めモードになってしまう人も少なくなくて、そうなると子どももやさぐれて、家族全体が機能低下してしまいます。これは医師側の問題であることも否定はしませんし、子どものやさぐれ問題が膨らんで医療にくる子も少なくありません。

 そのためにも、ご家庭で「医学的な診断を受けることが、どういう意味を持つか」については、冷静に考えなければいけないですよね。診断されることで福祉のサポートにつながって機能がアップするなら早いほうがいいですし、逆に親御さんが子どもに対して諦めの気持ちを抱きそうだったり、ネグレクト的になってしまいそうなら、もしかすると医療機関よりも児童相談所や場合によっては心理相談機関のほうがいい場合もあるように思います。

 逆に言うと、そういう意味でももっと発達障害概念の啓発が必要なのかなとは思っています。やはり診断されることで子どもや家族が希望を持てるような体制が大事なんだろうと思っています。

(文・谷わこ)

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