疲れ切った勤務の後には、ダンスの練習が二~三時間もあった。遅刻などの罰金が給料から細かく天引きされ、来日前に聞いていたほどは稼げない。フィリピン人ホステスに対する日本人従業員の態度も厳しかった。
我慢できず、「フィリピンに帰りたい」と店のマネージャーに相談したが、「来日させるための費用がまだ回収できていない」と許してもらえない。
働き始めて三カ月がたったころ、アンジェラさんは先に来日していた同郷の知人に連絡をとり、大阪へ逃げた。
大阪ではミナミのパブで、ホステスとして懸命に働いた。そんな生活で出会った日本人男性との間に、未婚のままジェニファーを授かった。
男性は別に家庭をもち、そもそも結婚する意思がなかったようだ。出産前には「子どもの認知はする」と言っていたが、それを知った男性の家族が猛烈に反対し、結局うやむやにされたという。出産後しばらくたつと、経済的なサポートも途絶えた。
日本人の父親からの認知がないまま生まれたジェニファーは日本国籍を取れず、フィリピン国籍者として日本で暮らしていくことになった。
アンジェラさんはその後、別の日本人男性と結婚した。しかし、その夫からはDVを受け、暴力の矛先は時に娘のジェニファーへも向かった。