【大学教員の「メディアへの発信度」ランキング 41~50位】『大学ランキング2024』(朝日新聞出版)より。1997〜2022年に刊行されたおもな新書の執筆者で常勤の大学教員(教授、准教授、講師、助教)が対象。延べ人数。客員教授、名誉教授などは含まない。また、翻訳、対談、共著は外した。肩書は執筆当時に所属していた大学。対象の新書は次のとおり。朝日新書、岩波新書、角川新書、河出新書、幻冬舎新書、講談社現代新書、光文社新書、集英社新書、集英社インターナショナル新書、小学館新書、新潮新書、ちくま新書、中公新書、文春新書、平凡社新書、NHK出版新書、PHP新書。

 新書を多く刊行している大学教員として、本郷和人さん(東京大教授)、吉見俊哉さん(国学院大教授)がいる。2020年以降、彼らが刊行したおもな新書について、本郷さんは『日本史の法則』(河出新書)、『北条氏の時代』(文春新書)、『日本史を疑え』(文春新書)、『徳川家康という人 』(河出新書)、『歴史学者という病 』(講談社現代新書)などがある。吉見さんは『大学は何処へ 未来への設計』(岩波新書)、『東京復興ならず』(中公新書)、『検証 コロナと五輪』(河出新書)、『東京裏返し 社会学的街歩きガイド』(集英社新書)などを著した。

 新書を通じて社会に警鐘を鳴らす教員がいる。高橋洋一さん(嘉悦大)、森永卓郎さん(獨協大)、井手英策さん(慶應義塾大)、苅部直さん(東京大)、浜矩子さん(同志社大)、中島岳志さん(東京工業大)、白井聡さん(京都精華大)などだ。

 温故知新。

 2000年以前の大学教員によるベストセラー新書を見てみよう(出版当時の所属大学・著者、出版社)。これらは古典の部類に入るといっていい。

  • 『日本の思想』(東京大・丸山真男さん、岩波新書)
  • 『論文の書き方』(学習院大・清水幾太郎さん、岩波新書)
  • 『タテ社会の人間関係』(東京大・中根千枝さん、講談社現代新書)
  • 『知的生活の方法』(上智大・渡部昇一さん、講談社現代新書)
  • 『理科系の作文技術』(学習院大・木下是雄さん、中公新書)
  • 『ゾウの時間、ネズミの時間』(東京工業大・本川達雄さん、中公新書)
  • 『「超」整理法』(一橋大・野口悠紀雄さん、中公新書)

 大学入試の問題には新書の一節からよく出題される。高校教師に「受験勉強のために役立つから」と言われ、仕方なく読んだ新書がめっぽうおもしろく、その執筆者が取り組む研究テーマを学べる大学を選んだ、という受験生がいる。ほんのちょっとだけ関心があったテーマの新書を読んだらはまってしまい、その執筆者=教員から学びたいと思って大学を選んだ高校生がいる。また、専門分野を究めたくその教員から指導を受けたいがために大学院を選んだ大学生がいる。このような大学選びも悪くないだろう。

「この大学はすばらしい。なぜなら、わたしたちに新書を通じて多くのことを教えてくれる教員がいるから」。

 このように大学への見方が変わるとしたら、その大学にとってこれほどありがたい話はない。

教育ジャーナリスト・小林哲夫