しかし番号通知は「非通知」で、声の感じもおかしいため、
「あなたBなの?」
というと電話はすぐに切れた。
Bさんも、母親の携帯電話の番号を他人に教えたことはほとんどない。
筆者もAさん、Bさんとは10年ほどの付き合いではあるが、もちろん母親の携帯電話の番号を聞いたことはないし、知らない。
Aさんがこう話す。
「私が議員秘書であることは、その気になって調べればわかります。しかし、母親の携帯電話の番号はまずわからないはずです。衆議院の事務局にも母親の携帯番号は提出していない。入院時の病院や保険加入時に緊急連絡先で書いた記憶がある程度です」
「スキャンダル」という言葉に反応しやすい
そして手口について、
「母親によれば、犯人は『党本部』といった言葉を出してきて、政治関係にも精通しているような印象だったと言います。犯人グループには政治に詳しい人物がいるのではないでしょうか。議員秘書の親に対して『スキャンダルがある』などと言えばプレッシャーになるので、すぐに通報されることがないと踏んでいたのでは。うちの議員がそんな大金を現金で持ち歩くことも、動かすこともまずないのですが……」
と語った。
Aさんの母親は、460万円という老後のための貴重な蓄えを、たった2日間で失ってしまった。あまりのショックに、ふさぎ込む日々だと言う。
国会議員は衆院が465人、参院が248人の計713人いる。議員一人につき公設秘書は3人まで認められており、それだけで2千人を超す。他にも、私設秘書やスタッフもいる。政治家の関係者を狙った詐欺であれば、“標的”は多い。
Aさんは、
「政治家同様、秘書も家や実家を留守にしがちです。私のようなことにならないように、皆さんも気を付けてほしい」
と注意を呼び掛けている。
(AERA dot.編集部・今西憲之)