国会議員の秘書の家族が、振り込め詐欺の標的になっている。議員の名前を出して「スキャンダル」といった言葉で危機感をあおり、政治の現場で使われる用語でリアル感を出しているという。被害にあった秘書は「親の携帯電話にかかってきた」と話しており、多くの情報が漏れていると指摘する。未遂の案件も続いており、永田町関係者は注意が必要だ。
「ただショックの一言に尽きますね……」
沈痛な表情でそう話すのは、野党の衆院議員秘書のAさん。
この道20年のキャリアを誇るベテラン秘書だ。現在、仕えている議員も連続当選しており、手腕があることでも知られている。
Aさんの表情がさえないのは、実家の80歳近くになる母親が「振り込め詐欺」に遭ったためだ。被害額は460万円。手口は巧妙で、Aさんや、Aさんが仕えるX議員の名前まで出しており、多くの個人情報が漏れていたことがわかった。
「議員のお金をなくしてしまった」
Aさんの話を元に、母親と犯人の当時のやりとりを再現する。
9月末、関東地方に住むAさんの母親の携帯電話に連絡があった。
Aさんになりすました人物が、
「風邪ひいてちょっと声がおかしい」
などと言いながら、深刻そうに話した。
「X議員のお金、1800万円をなくしてしまった」
「すぐにお金がいるのだが、なんとかならないか」
「このままだと、X議員のスキャンダルがばらされる」
などと様々な話を出しては言葉巧みにだましたという。
母親はすっかりAさんと信用してしまい、
「どうすればいいの」
と聞いたところ、
「いくらならお金ある?」
「おろせるだけ、おろせないか?」
と聞かれたという。