「500万円くらいなら、なんとかおろせる」

 母親はそう答えてしまった。

「じゃあ、とりあえず銀行に行ってきてほしい」

「今、X議員と一緒で動けない。お金は党職員に取りに行かせる」

 母親は近くの銀行を2店舗まわって、200万円を引き出すことができた。

スーツ姿の若い男が

 そこに、また犯人側から電話が入り200万円を引き出せたことを母親が伝えると、スーツ姿の若い男が「〇〇党の職員です」などと名乗り、自宅に現れた。母親は現金200万円をそのまま渡した。

 するとまた、党の人物になりすました犯人から電話が入り

「1800万円のうち1千万円は党本部でなんとか都合をつけました。残り800万円、どうしても必要なので、ある分を追加でおろしてきてほしい」

 そして、こう追加することも忘れなかった。

「X議員のスキャンダルがばらまかれてしまうので」

 母親はその話を信じて、翌日にさらに計260万円を3つの銀行から引き出し、前日に来た党職員を名乗る男に同じように260万円を渡してしまったのだ。

 結局、犯人の手には計460万円が渡ってしまった。

 母親は胸をなでおろしつつ、時間が経つにつれ、「おかしいのではないか」と思い始めた。しかし、

「もし振り込め詐欺なら引っかかってしまったことが恥ずかしい」

 という思いが交錯し、3~4日してAさんの兄に電話をしてありのまま話をした。

「すぐに私のところにも兄から電話があり、詐欺だとわかった」

 とAさん。地元の警察署に被害届を出したのは5日後だった。

 警察では、

「典型的な振り込め詐欺の手口ですね」

 と言われたといい、現在は捜査中だ。

 ただ、母親の携帯電話には「非通知」での着信だったため、難航しているという。

別の秘書にも

 自民党の衆院議員の秘書Bさんも同じような経験をしたという。

 数カ月前のこと。東北地方に住む母親の携帯電話に、

「お金をなくしてしまった」 などと不審な内容でかかってきた。

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公設秘書だけでも最多で2千人超