どのような企業に投資するのがいいかな、とだれかに相談すると、きっと、人によってさまざまな答えが返ってくるでしょう。名前が知れた大企業の株式を買う方が安心だという人もいれば、自分が好きな商品を作っている企業の株を買いたいという人もいるでしょう。
しかし、全ての投資家に共通する最大の目的は、「儲けること」です。もっと言えば、なるべく少ない元手で、たくさん儲けたいということです。
そこでブラウンは、こうした投資家の願いをそのまま数式にしました。企業が生み出す利益(これが投資家のものになります)を、投資家が企業に対して出した(投資した)お金の総額である株主資本で割った値をROE(Return On Equity: 自己資本利益率)と呼び、このROEの値が高い企業に投資すべきだと考えたのです。
たとえば、投資家が1000万円のお金を出したとき、それを元手に毎年200万円を稼いでくれる企業AのROEは20%になります(つまりROE=200万円÷1000万円=20%)。一方、毎年50万円しか稼いでくれない企業BのROEは5%になります。この場合はROEが高いほうの企業Aに投資した方がよいということになります。
このように、もともとは投資すべき企業を選ぶために、企業間を比較する基準として考え出されたROEですが、今では世界中の企業が、経営計画の中でROEの目標値を定めています。なぜなら、投資家が着目する指標であるROEを高めればお金を集めやすくなるからです。
ROEを高めるには、ビジネスをうまく進めて利益を増やしていくのはもちろんのこと、この式の分母になる「株主資本」が増えすぎないようにするという点も、企業側は気にかけています。
その方法として、多くの企業は自分の会社の株をみずから買っています。これは「自社株買い」と呼ばれています。つまり、自社の株式の一部を株主から買い戻すのです。