こうして生み出された数式を知ることで、世界中のだれもが同じ本質をつかむことができるのです。なぜならば、数式は言葉とちがってだれにとっても同じ意味になるからです。

たとえば、y=3x+1という数式を考えてみましょう。これは、世界中のだれもが「xを3倍して1を足す」という意味だとわかります。非常に明快です。数式は、たった一通りの解釈しかありえないのです。

 数式は、真の意味での世界共通語です。

 この世界のだれかが初めて解明して数式にすれば、文化や言語や政治制度などにかかわらず、数式についての知識さえあれば、世界のすみずみまでその物事の本質への理解が浸透するのです。さらに、時を超えて、数百年、数千年後もその数式は生きつづけていきます。

 数式はこの極限までの客観性という強みによって、人々の行動を変える大きな力を持ちます。そして、他分野への応用や新たな発見にもつながっていきます。そうやって社会が進歩していくと新たな課題が発生して、このサイクルが繰り返されるわけです。

「儲けたい!」に応えた数式

 ここで、数式の創造サイクルが働いた事例を一つ紹介しましょう。もしかしたらビジネスパーソンの方は、企業の業績を評価するための次のような数式を見たことがあるかもしれません。

 ROE=利益÷株主資本

 この数式は、あらゆる投資家が抱える「どういう企業の株式を買うべきか」という、難しい課題に答えるために生み出されたものです。20世紀初頭にアメリカの実業家、ドナルドソン・ブラウンという人が考案したとされています。

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ROEの値が高い企業に投資すべき