埼玉県の“子ども放置禁止”条例案は非難が殺到して撤回されたが、海外には法律で子を一人にさせることを禁じる国もある。日本と何が違うのか。AERA 2023年11月6日号より。
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留守番や公園遊び、登下校、おつかいなどを子どもだけにする環境を“放置”とみなし、禁止しようとした埼玉県虐待禁止条例改正案。非難が殺到した結果、条例案を提出した自民党埼玉県議団は早々に撤回した。
「あの条例ができてたら、終わってた」
そうこぼすのは埼玉県で小中学生3人を育てる会社経営の40代女性だ。コロナを機に在宅ワークも増えたとはいえ、打ち合わせなどで外に出ることもある。
「条例が改正されていれば下2人は子どもだけでの留守番ができなくなっていたかもしれない」
県議団はホームページ上で改正案への意見を公募していたが、女性は全く知らなかったという。
「感度の高い人がキャッチして署名活動をやってくれたおかげで動きを知りました。知らないうちに改正になっていたかもと思うとゾッとします」
海外では留守番禁止
一方で、女性は近所の公園で放置されている子どもを見かけたこともあり、「そうした家庭にとっては必要なことなのかも」とも漏らす。小学生の女の子が2、3歳とおぼしききょうだいを連れ、2人だけで公園で遊ぶ姿を度々目撃していた。他の保護者と「どうしたんだろう」「危ないね」とは話すものの、手を差し伸べられずにいる。
海外に目を向けると、子どもだけの行動を法律で規制する国もある。アメリカの教育事情に詳しいハワイのバイリンガルスクール「TLC for Kids」代表の船津徹さんによると、子どもを一人で留守番させない年齢制限を法律で定めている州は全米で11州(2023年3月現在)あり、一般にアメリカでは「13歳未満の子どもを一人にさせないこと」が常識となっているという。ニュージーランドでも、14歳未満の子どもだけの留守番や公園遊び、登下校を法律で原則禁止している。フランスやイギリスも同様に「子どもを一人にさせない」が原則で、養育者が子どもの安全を守るべきという基本的な考えは浸透している。全英児童虐待防止協会は、12歳未満の子どもだけでの帰宅や留守番は控えるべきだと伝え、やむを得ず留守番をさせる場合は友人宅や家族に預けることを勧めている。