ペ・ヨンジュンと「冬のソナタ」が示したピュアな愛は、ミドルエイジの女性たちが日常に追われながら蓋をしていた情熱を解放し、うねりを起こした。2004年、「冬ソナ」の撮影地を訪れるツアーが人気となり、韓国を訪れる日本人観光客は18万7千人増加。日本でもDVDや主題歌のCD、ペ・ヨンジュンがCMに登場した商品などの売り上げが好調で、第一生命経済研究所は、日韓両国の経済効果は2300億円に上るとはじき出す。日経トレンディのヒット商品ベスト30では「冬のソナタ」が1位に堂々のランクイン。同年の「ヒット商品番付」(日経MJ)で「韓流」が横綱に。ペ・ヨンジュン、イ・ビョンホン、ウォンビン、チャン・ドンゴンの「韓流四天王」がさらなるファンを呼びこみ、地上波ではイ・ビョンホン主演の「美しき日々」やクォン・サンウ主演の「天国の階段」をオンエア。ミドルエイジ女性のものと思われていた韓流は、「宮廷女官 チャングムの誓い」のNHKでの放送をきっかけに、時代劇ファンの男性たちをも夢中にさせた。韓流は日本のエンタメの風景を変えていった。
2006年、潮目が変わる。ドラマのすそ野はレンタルDVDなどを中心に広がる一方、韓国映画の日本向け輸出総額は前年比82%減と大きく落ち込む。原因は、韓流人気に期待した日本のバイヤーが高値で買い付けて大規模に公開をしたにもかかわらず、興行成績が振るわなかったこと。市場のバランスが崩れ、バブルが崩壊したのだ。
(ライター・桑畑優香)
※AERA 2023年10月30日号より抜粋