挙げ句に岸田首相は国会に報告するより先に、訪米してバイデン大統領に「防衛力増強」を報告、手土産にしたのだ。
岸田政権がさらに狡猾なのは、これと同じタイミングで原発回帰まで閣議決定により歴史的大転換をしてしまったことだ。
岸田首相が古い原発の運転期間の延長と新型原子炉への建て替えを含む原発活用方針の検討を指示したのは22年8月24日。それからわずか4カ月後の同年12月22日、「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針案」をとりまとめ、原発を「最大限活用する」と決定した。安倍政権も菅政権でも「現時点では想定していない」としてきた原発の新増設や、60年を超える運転を認めることを盛り込んだのだ。2011年の東京電力福島第一原発事故以来、原発依存度を可能な限り低減するとしてきた政府方針を覆し、翌23年2月10日に閣議決定した。
もっとも、原発推進の経済産業省内部では、福島の原発事故直後から水面下で着々と原発回帰のタイミングを計ってきていたというから、関係者にとっては「わずか4カ月」ではないのだろうが、それでも表の政府方針は「原発依存度を可能な限り低減」だったのだから、国会議論なき方針転換は国民への裏切り行為だ。