岸田首相は安倍氏が確立した国会軽視を加速
こうした国会軽視、国民軽視の安倍政権の姿勢を引き継ぎ、さらに加速させているのが現在の岸田文雄政権だ。
日本の戦後の安全保障政策を大転換した「安保3文書」の改定は、臨時国会が閉幕した後の2022年12月16日に閣議決定された。
防衛省や外務省など政府内部では安倍政権以来の“既定路線”で進んでいたものの、公の場での議論は同年9月30日に首相官邸で初会合が開かれた「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」で行われたに過ぎない。それも会議はわずか4回開かれただけで、1カ月半後の11月22日には報告書をまとめ、政府方針を追認しただけのアリバイ的なものでしかなかった。
本来ならば、まずは国会で全体像を示し、必要な装備や予算規模についての議論も行ったうえで具体化していくべきなのに、GDP比2%の防衛費だとか、敵基地攻撃能力保有といった各論を先行させ、与党内の協議会とワーキングチームの了承を取った。その間、国会での議論はほとんどなく、国会閉会後の閣議決定というプロセスだったのである。メディアも決定直前にしか大きく取り上げないから、国民には何がどうなっているのか正確に伝わっていない。だから岸田氏が繰り返す「我が国を取り巻く安全保障環境は急速に厳しさを増している」というフレーズだけで納得させられてしまう。