岸田首相(ロイター/アフロ)

 安保法、特定秘密保護法など、強行採決があまりにも多かった安倍政権。国会軽視、国民軽視の姿勢は、岸田政権にも引き継がれている。だが、かつて自民党はできる限り野党の意見を聞く配慮をしていたという。小塚かおる氏の新著『安倍晋三 VS. 日刊ゲンダイ 「強権政治」との10年戦争』(朝日新書)から一部を抜粋、再編集して解説する。(肩書は原則として当時のもの)

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かつてはもう少し野党に配慮した

「選挙で信任を得たのだから何をやってもいい、なんて考え方はおかしい。議院内閣制では、国会は野党の意見を聞くためにある。野党も国民から選ばれた代表だ」

 自民党のベテラン議員を取材した際、安倍晋三首相の国会対応についてチクリと批判していた。先輩からの教えとして引き継がれてきたという。

 故渡部恒三元衆院副議長は衆議院のホームページにこう残している。渡部氏は政界引退時は民主党議員だったが、スタートは自民党だ。

〈竹下内閣が誕生した際、与党の国会対策委員長に就任して、最初に竹下さんからいただいた御指導は、「国会の運営については出来る限り野党の意見を聞いてやれ」ということであった。たしかに、与党が衆参両院で過半数をもっているから、すべて与党の言うとおりに国会が運営されて良いというなら、次の選挙まで国会はいらないということになってしまう〉

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小塚かおる

小塚かおる

小塚かおる(こづか・かおる) 日刊現代第一編集局長。1968年、名古屋市生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒業。関西テレビ放送、東京MXテレビを経て2002年、「日刊ゲンダイ」記者に。19年から現職。激動政局に肉薄する取材力や冷静な分析力に定評があり、「安倍一強政治」の弊害を追及してきた。著書に『小沢一郎の権力論』(朝日新書)などがある。

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かつてあった「7:3の構え」