岸田政権の支持率下落が止まらない。今年10月の朝日新聞の調査によれば、支持率は30%を切り、不支持率は2012年末に自民党が政権復帰して以降、最低の60%に達した。物価対策などを柱とした経済対策を発表しても、なぜ支持率が下げ止まらないのか。経済評論家の加谷珪一さんは、岸田政権の経済対策には「物語」が欠けている、と指摘する。その真意を聞いた。
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――加谷さんは、岸田政権が先日発表した経済政策には「物語」がない、とニューズウィーク日本版(2023年10月24日号)で指摘しています。
ここで言う「物語」とは、経済政策の論理的な筋道を示す、ということです。先日、岸田首相は経済対策の5本の柱を示しました。その中身を読み解くと、➀物価対策、②リスキリングなど持続的賃上げ、③工場の国内投資促進、④人口減少対策(デジタル化)、⑤国土強靭化、というものです。しかし、項目がただ列挙されているだけで、「どのように景気を拡大させ賃金を上げていくのか」という筋道が見えませんでした。
――具体的に、どのように示すべきだったと考えますか。
私は以下のような「物語」の例を上げました。
「設備投資倍増から賃金の上昇へ」といったようなキャッチフレーズを示して、税制改正や生産拠点の国内回帰支援策(③)をすることで、設備投資を促して、成長と賃上げを実現するという筋道を示す。この筋道に沿って、たとえば、企業が設備投資を渋らないように短期的に家計の支援を行って購買力を高めつつ(➀)、生産性の向上策を実施する(②)。それとともに、災害などによる経済の停滞を防ぐためにインフラを再整備する(⑤)。企業の設備投資を進め、家計を支援すると需要が増え人手不足が深刻になる可能性があるため、回避策としてデジタル化(④)などで企業の供給力を強化するというような筋道です。
以上のように説明すれば、国民への伝わり方も違ったのではないでしょうか。