――23日には所信表明演説があります。所得減税について発言するという報道もあります。そもそも所得減税に効果はあるのでしょうか。

 効果はないと思います。例えば、年収400万円のサラリーマンが、どのくらいの所得税を払っているかというと、月7千円以下なんです。 なので、二割減税しますといっても1400円くらいしか安くならないんですよ。年収300万円以下であれば、そもそもほとんど所得税がかかっていません。なので、所得減税しても、得するのは税率が高い高額所得者だけです。

――岸田首相は減税にこだわっているように見えます。

 ここまで批判を浴び続けて、社会から減税を求める声が大きいので、試しに観測気球を挙げてみたのだと思います。しかし、そこにメディアが飛びついてきてしまった。だから、引っ込みがつかなくなってしまった、というのが本音だろうと思います。減税しないと「また騙された!」と言われてしまうから、形だけでも作らなければならない。そんな風になっているように見えます。防衛費増額のときには、財源の一つとして所得増税を挙げてましたから、この発言とも完全に矛盾します。

――岸田政権には何を期待しますか。

 効果のない所得減税よりも、経済対策をどういう道筋でやっていって、またそれがどういうメカニズムで日本の景気拡大や賃上げに効いてくるのかというのを、明確に示してほしいですね。要は「物語」を示すということです。前回示した5つの項目をどういう比率でどういった順番でやるのかによって、今後の評価は変わってくると思いますが、まずは真摯に説明することが大切でしょう。

(構成/AERAdot.編集部・唐澤俊介)

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唐澤俊介

唐澤俊介

1994年、群馬県生まれ。慶應義塾大学法学部卒。朝日新聞盛岡総局、「週刊朝日」を経て、「AERAdot.」編集部に。二児の父。仕事に育児にとせわしく過ごしています。政治、経済、IT(AIなど)、スポーツ、芸能など、雑多に取材しています。写真は妻が作ってくれたゴリラストラップ。

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