今回の法改正の目的は、診療参加型の臨床実習を充実させることだが、もう一つ、それを後押ししたものがある。「2023年問題」といわれる、アメリカからの通告だ。これまでは、日本のどの大学医学部を卒業しても、アメリカの医師国家試験に合格すればアメリカで医師になることが可能だった。ところが、「23年以降は(新型コロナウイルス感染症の流行により24年以降に変更)、世界医学教育連盟(WFME)が認定した大学医学部の卒業生に限る」という通告が10年に出されたのだ。
当時、アメリカの臨床実習は最短でも72週であり、現在は80週を超える大学も。一方、当時の日本の臨床実習は多くの大学で50週前後。国際基準をクリアするためには、アメリカのレベルに近づく必要があった。そこで、15年にJACMEが設立され、17年にWFMEから国際評価機関として認証を受けた。JACMEが認定する大学医学部の卒業生は、アメリカで医師になるための申請資格を得られることになる。
「各大学の教育が国際的な基準を満たしているか、評価するのが私たちのミッションです。コア・カリキュラムに沿った教育がなされているか、臨床実習の時間・内容ともに十分かなどを評価し、基準に満たない部分は改善をお願いします。現在では多くの大学で臨床実習が70週前後にまで増えており、医学部教育は大きく変わりつつあります」(奈良医師)
学ぶ制度が変わる今 学生たちの意識改革も必要
近年の傾向として、教養教育の期間の短縮や、基礎医学教育と臨床医学教育を統合的に学ぶカリキュラムを組む大学が増えている。インターネットを活用したe-learningや、学生が少人数のグループで自己学習やディスカッションする問題解決型学習(PBL)、チーム基盤型学習(TBL)などを取り入れる大学も。
臨床実習は、大学付属病院のほか、地域の病院やクリニック、介護施設などでも行われる。実習施設やカリキュラムはオープンキャンパスや大学のホームページで公開しているため、確認しておこう。