2023 年4 月から改正医師法が施行され、医学生による臨床実習での医行為が法的にも認められるようになった。法改正の目的は、診療参加型の臨床実習を充実させることだが、もう一つ、それを後押ししたものは「2023年問題」といわれる、アメリカからの通告だ。好評発売中の週刊朝日ムック『医学部に入る2024』では、「変わる医学部カリキュラム」について取材した。
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臨床実習は見学主体から実践重視へ 国際基準を満たす週数と内容に変化
これまでの日本の大学医学部では、講義を聞く「座学」が授業の中心であり、臨床実習でも医師による診療の「見学」がほとんど。このような「実践的な教育の乏しさ」が、日本の医学教育の問題点とされてきた。日本医学教育評価機構(JACME)の常勤理事として多くの教育現場を見てきた奈良信雄医師は、こう話す。
「アメリカの臨床実習では、学生も医療チームの一員として、指導医のもと医行為を行います。日本でも『見学型』ではなく『診療参加型』の臨床実習を導入することが必要でした」
2000年以降、日本では医学教育の改革が行われてきた。全国すべての大学医学部で同等の医学教育を行えるよう、6年間で学ぶべき内容を明確に示した「医学教育モデル・コア・カリキュラム」を策定。コア・カリキュラムは時代に合った内容へと随時改訂されており、現在の医学教育の土台となっている。
医学部教育の核となる臨床実習を充実させるためには、それ以前に十分な医学的知識と診療に関する技能を身につける必要がある。その評価のために行う「臨床実習開始前共用試験」を開始。知識を問う「コンピュータ試験(CBT)」と、技能・態度をみる「客観的臨床能力試験(OSCE)」で判定し、この試験をクリアした学生だけが臨床実習に参加できる。
ただし、これまで共用試験は法的に定められたものではなく、カリキュラムや試験の実施は大学により差があった。加えて、学生が医行為をすることに慎重な大学も少なくなかった。そのような背景から、23年に施行された改正医師法では「共用試験に合格した医学生は医師の指導監督のもと、知識や技能の修得のために医業を行うことができる」旨を明記。さらに共用試験が公的化され、臨床実習を受けるための資格要件となった。