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地域医療に従事する医師の養成を目的とした入試の選抜枠「地域枠」の利用者は開始以降、年々増加している。地域枠の医学部生は、卒業後どのようにキャリアを積んでいるのだろう。好評発売中の週刊朝日ムック『医学部に入る2024』では、千葉県地域枠出身の医師2人に聞いた。前編に続き、後編をお届けする。
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福島県出身 千葉大学医学部卒
千葉大学医学部附属病院 脳神経内科 和泉 未知子医師
和泉未知子医師は、福島県の出身だ。医師を目指す気持ちは子どもの頃からあった。しかし、高校卒業時点では学力不足を感じ、医学部への進学を断念。東北大学理学部へと進んだ。大学卒業後、東京大学大学院医学系研究科医科学専攻修士課程を経て、「やはり医師を目指したい」と、医学部への学士編入を志した。
「東日本大震災が一つのきっかけになりました。出身地が被災地となったことで、『人生いつ何が起こるのかわからないので、やれるうちにやりたいことをやっておこう』と強く思うようになり、医学部受験を決意しました」
ちょうど同じタイミングで、千葉大学医学部の学士編入試験があるのを見つけ、受験。一度は不合格の通知を受け取ったものの、3月に繰り上がりで合格の連絡を受け、入学にこぎつけた。地域枠に応募したのは医学部に入学した後だ。大学で慣れ親しんだ千葉県の地域枠を迷わず選んだ。
「千葉での暮らしはとても気に入っていました。東京へのアクセスは良好で便利ですし、家賃も安く、野菜や海産物といった食べ物もおいしい。少し足を延ばすと、風光明媚な場所へも気軽に訪れることができます。とはいえ、地域枠に応募するとなると住みやすさ以外に、医師として十分な教育環境があるのか、勤務できる医療機関が限られ、不自由を感じることはないかなども重要視しなければなりません。最初は不安がありましたが、県が主催する地域枠の説明会に参加するうちに払しょくされていきました」
地域枠の医師として何を学ぶか考え、和泉医師が選んだのは脳神経内科だった。「脳はまだわからないことが多く、興味深い」のだという。
卒業後の初期研修2年間は、内科研修の充実している千葉市立青葉病院に勤務。その後、千葉大学医学部附属病院の脳神経内科に入局し、後期研修はそこから派遣されるかたちで、千葉県循環器病センターと東千葉メディカルセンターに1年ずつ勤務した。