千葉大病院の脳神経内科では、後期研修の3年間、1年ごとに病院を異動して臨床経験を積むというキャリア形成プログラムが組まれている。どこに勤務するかは、プログラムごとに定められたコース管理者と相談したうえで決定する。和泉医師の場合、常勤で腰を落ち着けて働ける病院を紹介してもらえたため、じっくり臨床経験を積めた。

「私は千葉大医学部の卒業生ですし、博士号を取りたいという思いがあったので、千葉大病院の医局に入局し、臨床と研究を両立する道を選びました。ですが、千葉県の地域枠では、私が選んだ道以外にも、診療科や医療施設ごとにさまざまなキャリア形成プログラムが用意されていて、それぞれ勤務先や期間が異なります。専門医のスキルを究めたい、博士号を取りたいなど、医療者としてどのようなキャリアを描きたいかをよく考え、情報を集めておくことが大切だと思います」
キャリアに迷っている場合でも、キャリアサポーターの医師や県のキャリアコーディネーターに相談できるそうだ。
3年間の後期研修を終え、和泉医師は千葉大病院の医局に戻った。しばらくすると妊娠していることがわかり、期の途中で産休と育休を取得。この4月から復帰した。現在は月曜から木曜までは外来を中心とした診察を担当し、金曜は博士論文のための研究にあてている。研究しているのは、認知症やパーキンソン病などの変性疾患の治療だ。
「パーキンソン病の治療は、医師の薬のさじ加減で症状が変わってきます。薬剤調整や生活指導を医師がうまくリードできれば、日常生活動作(ADL)の向上につながります。患者さんがみるみる元気になっていくさまを目にできるのは、医師としてのやりがいにもなります」
和泉医師が所属する千葉大病院認知症疾患医療センターでは、近い将来の「65歳以上の5人に1人が認知症になる」といわれる時代に向けて、地域における認知症の啓発活動にも携わっている。8月には地域の子どもたち向けの「カレーうどんをつくりながら認知症について学ぶイベント」も開催した。これは、子どもたちとの関わりが認知症患者に自活力を与えられるのではないかという目論見のもと、子どもたちを対象に開催しており、楽しみながら認知症について学ぶことができるイベントだ。